ディスクブレーキ

このチュートリアルでは,OpenCascadeLinkを使って,ディスクブレーキの主要部分であるディスクプレート(円形金属板)を作成する方法について説明する.大きさと作成過程は,コンピュータ支援設計(CAD)のチュートリアル [1,2]に基づく.

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ディスクプレートの作成は,複数のステップで行われる.まず,本体を作成する.本体はディスクロータと呼ばれる部分で,ディスクプレートとハットセクションが含まれる.第2のステップでは,ハットセクションに穴を開け,ディスクの中央にスロットを1つ加える.最後に,穴のパターンをディスクの表面全体に加える.

パッケージをロードする.

ディスクプレート

x-y面の横断面を指定することで,ディスクプレートを作成する.この横断面は,x軸の周りの回転から作成される立体の基礎となる.下の図では,不透明なディスクブレーキ内の濃い灰色で示される部分が横断面である.

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横断面は12個の点 を含む1つの多角形からなり,ディスクの半径は144mmである.

ディスクプレートの横断面を指定する.

すべての点はx-y平面上にあることに注意する.

構築されたオブジェクトが正しい方向に向いていることを確かめることが大切である.このため,OpenCascadeAxis3Dを使う.

3Dの参照軸を作成する.
ディスクプレートの横断面を可視化する.
横断面からOpenCascade形状を作成する.

次に,横断面をx軸に沿って回転軸の周りで回転させる.

回転軸を作成する.
回転軸の周りで横断面の回転スイープを作成する.
作成された形状オブジェクトのタイプを調べる.
境界要素メッシュを抽出する.
ディスクプレートの境界要素メッシュを可視化する.

完全な要素メッシュを生成し,境界メッシュの構築が意図した通りに行われたかどうかを確かめる.作成をスピードアップするために,一次メッシュを生成する.

完全な要素メッシュを作成する.

次に,C面取りとフィレットを適用する.

現行バージョンのOpenCascadeLinkには,C面取りやフィレットを適用するために,可視化から直接特定の辺を選択する機能はない.代りに,辺の識別番号(ID)を手作業で指定する必要がある.モデルが大きくなればなるほど,辺の数も増える.このため,C面取りやフィレットをできるだけ早い段階で適用することが望ましい.具体的にどの辺にC面取りやフィレットを適用するかを求めるためには,OpenCascadeLinkを使うに記載されているように,Manipulateを使うと便利である.

形状に含まれる辺の数を調べる.

ディスクプレートの中央の穴に,半径3mmのC面取りを施す.

辺18と辺20にC面取りを施す.

その後,さらに半径2mmのC面取りを施す.

辺2,辺21,辺30にC面取りを施す.

次に,半径1mmのフィレットを3個作成する.

辺19,辺20,辺30にフィレットを施す.

最後に,1mmのC面取りを2本の辺に施す.

辺45と辺46にC面取りを適用する.

C面取りやフィレットを作成するたびに,辺の数は増える.その結果,辺には新しいID番号が付けられる.

境界要素メッシュを抽出する.
フィレットとC面取りを施したディスクプレートを可視化する.

ハットセクションの穴

ハットセクションの上部の表面に,中央の穴の周りに直径15.3mmのボルト穴を開ける.それぞれのボルト穴の両側に1mmのC面取りを施す.

作成した辺を探して選択しなくて済むように,別の方法でC面取りを行う.まず「ツール」を作成して,それを適用したときにC面取りを施した穴が作成されるようにする.

作成するツールは,実際の穴となる円柱と,円柱の両端の直方体の3つの部分からなる.C面取りは,円柱と上の直方体を繋げる.このツールを作成する目的は,穴とC面取りを一挙に生成することにある.ツールを適用すると,ディスクブレーキにC面取りを施した穴が開けられる.

穴を開けるために使うCylinderを作成する.
直方体を2つ作成し,円柱の両端に置く.
結合する.
ブール領域を可視化する.
ブール領域から OpenCascade 形状を作成する.
辺25と辺26にC面取りを施す.
C面取りを施した曲面を可視化する.
中央の穴の周りに,5インスタンスの切片を作成する.

ブール領域とディスクプレートの差を計算することによって,穴を開ける.

ブール操作を適用する.
境界要素メッシュを抽出する.
境界要素メッシュを可視化する.

隙間

ディスクの中央に円状に,長方形の切込みパターンからなる隙間を作成する.まずPolygonを使ってボスを作成し,それでディスク上に円状に切込みを入れる.ボスはy軸に対して対称となるように,それぞれ反対側に15°回転する.その後,回転軸の周りに円状のパターンを20インスタンス作成する.これらの20インスタンスがディクスプレートを切断する.

ボスを形成する多角形を作成する.
ボスの回転スイープを作成し,対称にする.
2つの立体を結合する.

20個の切込みのそれぞれについて,4つの角にフィレットを施す必要がある.それぞれの辺にフィレットを適用することを避けるために,半径2mmのフィレットをボスの4コーナーにまず適用する.その後,ボスとディスクプレートの差を計算する.

辺18,辺20,辺34,辺36にフィレットを施す.
ディスクプレートと1つのボスを可視化する.
ボスがディクスの表面と交差することを確かめる.
20個のボスを作成する.
切込みを入れる.

最後に,残りの辺を丸くするために,スロットの中央にトーラスを作成し,切込みを入れる.

内側の直径が12mm,外側の半径が146.5mmであるトーラスを作成する.
トーラスがディスクプレートの中央にあることを確かめる.
切込みを入れる.
境界要素メッシュを抽出する.
新たな部分を加えたディスクプレートを可視化する.

ディスクの表面の穴

以下の直径6mmの穴は,特定のパターンに従う.パターンは,円の弧からなる曲線に沿った5つの穴からなるもので,それぞれの穴は曲線に沿って等間隔に置かれる.このパターンは,x軸の周りで20回繰り返して置かれる.

円弧は,任意の円の外周部分に沿った2点間の曲線部分である.そのような弧を追跡するためには,円の中心,半径,中心角度を定義する必要がある.

この場合,弧は半径,中心,角度を指定することによって定義されてはいない.代りに,高さが30mm,幅が38mmの長方形内部に弧を置くことによって,これらの特性が自動的に定義されている.この長方形は,原点から88mm離れて,z軸に4.55°の角度で置かれている.

弧は,左上と右下のコーナーで長方形と交差する.こうすることで,弧の幾何学的特性は自動的に定義される.

ここでは,これを手作業で行う必要がある.

長方形の座標を定義する.
軸の周りで-4.55°RotationTransformを作成する.
座標に変換を適用する.
回転させる長方形を可視化する.

以下は半径を計算するために使う公式である.

弧の半径を定義する.

弧の2つの点が同一の空間を占める半径と座標が求まったので,2つの方程式を解いて,円の中心とその角度を求めることができる.結果は,規則の集合として与えられる.

原点を中心としない円のパラメトリック方程式は以下で与えられる.

座標は2組あるので,4つの方程式を解く必要がある.解くべき変数は,の4つである.

方程式の集合を解く.

最初の規則の集合が,求めたい解を与えてくれる.

穴が置かれることになる座標を作成する.
弧に沿った点を可視化する.
5つの円柱を作成する.
軸の周りに同じパターンを20回繰り返す.
切込みを入れる.
細かい角偏向で境界要素メッシュを抽出する.
境界を可視化する.
ディスクプレートの完全なメッシュを作成する.
ラスタライズしたディスクプレートを可視化する.

参考文献

[1] https://www.youtube.com/watch?v=u88QW4tfNjo&t=493s

[2] https://www.youtube.com/watch?v=3Fk1bCMJchw&t=616s