非接触式風速計

このアプリケーションモデルでは,非接触式の流体流れ風速計のシミュレーションを行う.ここでは管に取り付ける微小電気機械システム(MEMS)装置を使い,管に存在する流体速度を接触なしで測定する[1, 2].これを行うために,装置の小さい部分を熱し,そのヒーターの上を通過する流れが,ヒーターによって生成された温度プロファイルを変形させる.温度プロファイルの変形は2点で熱センサーによって測定し,その温度の違いから装置を通過する流体の速度が計算できる.

1.gif

風速計装置のスケッチ.装置(灰色)はシリコン製で,同様にシリコン製の小さいヒーター(赤)が埋め込まれている.装置上を空気(青)が通過する.下の青い部分も空気であるがそこには流れ場は存在しない.

この図は風速計装置のスケッチである.装置は灰色で示された部分でシリコン製である.赤で示された小さいヒーターが埋め込まれており,これもシリコン製である.流体は装置の上を左から右に流れる.装置の下の青い部分も同じ流体であるが,その部分には流れ場は存在しない.ヒーターの左右にはそれぞれ熱センサーが埋め込まれている.流れ場がヒーター上を通過すると,熱プロファイルが非対称になり,2つの熱センサーの間の温度差を検出することができる.

有限要素パッケージをロードする:

モデル

装置をモデル化するために,熱移動のシミュレーションを行う.熱方程式は以下で与えられる:

ここで は温度分布, は質量密度, は比熱容量, は熱伝導率, は流体の流速, は熱源である.すべての係数は,シミュレーション領域の異なる材料領域において異なる値を持つ.熱伝導率 は拡散係数であり,シミュレーション領域全体でアクティブであるが,場所によって異なる値が適用される. は対流係数であり流体が装置上を流れているところでのみアクティブである. は荷重係数であり装置内のヒーターをモデル化するために使う.

独立変数を設定する:

メッシュ生成

まず手動で境界形状を設定する.大きさや角度等の装置パラメータを設定する.

スケールを設定する:
形状パラメータを設定する:

はシリコン装置の切り抜きの角度である.

追加の形状パラメータ:
境界メッシュの座標:
座標をグループ化する:
どのように座標が繋がっているかという情報を提供する境界セグメントを作成する:
セグメントをグループ化する:
装置のグラフィックスを可視化する:

これで境界形状の座標が得られたので,装置の境界条件および異なる材料パラメータが簡単に適用できるようにマーカーを加える.マーカーについての詳細はElementMesh生成チュートリアルのマーカーセクションに記載してある.

境界マーカーを設定する:
マーカーをグループ化する:
点要素からの入射とマーカーを設定する:
境界メッシュを生成する:
点マーカーを調べる:
境界マーカーを調べる:

境界メッシュが設定できたので,完全メッシュを構築する.境界メッシュは領域マーカーで拡張される.これらはそれぞれの部分領域内部の座標点,整数マーカー,その部分領域における調整の量の指定によって設定される.

さまざまな部分領域における座標を生成する:
境界メッシュのマーカー座標を可視化する:
領域マーカーと指定されたメッシュ要素調整サイズで完全メッシュを生成する:
空気を青,シリコンを灰色,ヒーターを赤で表してメッシュを可視化する:

シミュレーション領域には全部で4つの異なる部分がある.シリコン装置,ヒーター,流域,シリコンの下の切り抜きである.シリコンとヒーターの材料データは同じであり,シリコンの上と下の流体も同じである.

領域マーカーを調べる:
ElementMarkerを1に設定したメッシュの部分を可視化する:

材料とモデル

次に材料データを設定する.装置はシリコン製で,流体として空気を使う.材料データは装置の部分領域によって異なる値を持つ.

熱伝導率を設定する:
対流を設定する:
対流プロファイルをプロットする:
シリコン上部の流れ場を可視化する:
荷重を設定する:
部分領域の質量密度を設定する:
部分領域の比熱容量を設定する:
パラメータとモデルを設定する:

シミュレーション領域の下辺に温度を設定する.

HeatTemperatureConditionの位置を示す:
境界条件を設定する:
偏微分方程式を解く:
解を可視化する:
最小および最大の温度を計算する:
装置上の2点間の温度差を計算する:

次のステップとして,装置の動的挙動を調べる.

時間変数を設定する:
偏微分方程式を再生成する:
境界条件を再び設定する:

さらに初期条件を指定する必要がある.ここでは温度0から開始する.

初期条件を設定する:
偏微分方程式を解く:
最小と最大の解の値を求める:
さまざまな時間における等高線プロットを作成する:

高品質のグラフィックスを得るためには,Rasterizeの呼出しを削除するかコメントアウトするかする.

非接触式熱風速計の動きをアニメーションにする:

このアニメーションから,ヒーターの左側の熱センサーをもっと左に置くと,温度差がさらに大きくなることが分かる.

参考文献

1.  Ernst, Herbert; High-Resolution Thermal Measurements in Fluids; PhD thesis; Universität Freiburg, 2001: https://freidok.uni-freiburg.de/fedora/objects/freidok:201/datastreams/FILE1/content

2.  Rübenkönig, Oliver; Free Surface Flow and the IMTEK Mathematica Supplement; PhD thesis; Universität Freiburg, 2008: https://freidok.uni-freiburg.de/data/6440