焼きばめ
はじめに
焼きばめとは2つの金属部分を組み立てるときに使う製造技術である.これは一つの部品を熱し,もう一つの部品を冷やすことで行われる.誘発された熱収縮と熱膨張によって2つの部品がフィットするのである.組み立てた後,部品は周囲温度に戻る.その結果熱せられた部品は縮み,冷やされた部品は膨張する.熱せられた部品が冷やされた部品を囲んでいる場合,組立てられたものは1つにまとまる.
このモデルではタングステン棒をスチール枠に入れる.スチール枠は予熱でわずかに拡張するため,冷えた棒は枠に滑り込ませることができる.その後,2つの部品が同じ周囲温度に達すると,枠は徐々に収縮し棒は膨張する.これにより接合がぴったりして強くなる.
フィット過程の間の温度場の変化は熱移動モデルでのシミュレーションが可能である.シミュレーションはスチール枠の初期温度 および冷却されたタングステン棒の温度 から始める.縮小過程では棒とスチール枠は温度 の周囲媒体にさらされ,組立て過程の時間内の熱対流によりそれぞれ熱を得たり失ったりする.この過程をモデル化する.シミュレーションから,棒と枠を合わせるのに必要な時間 を推定する.
ここで使われる記号と対応する単位は用語集のセクションにまとめてある.
熱移動解析についての理論的情報は「熱移動」に記載されている.
領域
メッシュ生成
領域全体を直接離散化すると簡単にメッシュが生成できる.しかしその場合棒と枠の接合面(赤で表示)が保存されず,シミュレーションの正確さが低下する可能性がある.
関数BoundaryElementMeshJoinを使うと,メッシュ生成時に棒と枠の内部境界が簡単に維持できる.この関数は,リソース関数FEMAddOnsInstallでインストールできるFEMAddOnsパクレットで提供される.
次に棒と枠に異なるマーカーを割り当てる.これらのマーカーは材料パラメータ(, , )を設定するのに使うことができる.これにマーカーを使うと,それぞれの部分領域に対する公式を指定するよりもずっと簡単である.メッシュにおけるマーカーとその生成については「要素メッシュ生成」チュートリアルに記載されている.
マーカーが異なる部分領域を指定できるようにするためには,これらの部分領域にある座標を指定する必要がある.
境界メッシュとマーカー座標を可視化すると,マーカー座標を指定する過程を理解するのに役立つ.可視化ではマーカー座標をグループ化しマーカーに付ける色を設定する必要がある.
これですべての要素メッシュが生成できる.よい結果を得るために,メッシュ生成にはデフォルトの格子よりも細かいものを使う.
これでElementMarkerを使って材料パラメータが設定できる.
熱移動モデル
熱方程式(1)は,熱移動モデルの温度場について解くために使われる:
熱源のない過渡熱移動モデルの場合,(2)の熱源項 はゼロに設定される.固体がモデル化されるのでどのような内部流速 もなくなり,熱方程式は次のように簡約される:
効率的なPDE係数の設定についてのこちらのヒントも参照のこと.この場合,材料特性の記号名は,与えられた実際の値で置き換えられている点に注意する.これはPDEComponents関数がこれらのパラメータを置換するからである.
初期条件と境界条件
外部境界はすべて周囲媒体との熱対流にさらされる.熱移動係数と周囲温度はそれぞれ , で与えられる.
PDEモデルを解く
組み立てた棒と枠の間の熱流を解析するために,から でPDEモデルを解く.
後処理と可視化
焼きばめの効果を調べるために,時間とともに変化する温度分布 を可視化する.
アニメーションの質を向上させる方法はこちらでご覧いただきたい.
適合過程がどのくらいかかるかについてのおおよその時間 を推定する.完全な構造力学の熱膨張モデルを使わないのでこの推定はおおよそのものである.代りにスチール枠とタングステン棒の間の最初の隙間 だけを想定し,材料の熱膨張係数を使って棒と枠を組み立てるのにかかる時間 を決定する.
まず各時間刻みでの最高温度 (スチール枠)と最低温度 (棒)を取り出す.
熱膨張/収縮効果は,方程式(3)で表される.ここで および はスチール枠とタングステン棒の熱膨張係数である.
枠と棒の間の隙間 に基づいて,隙間が埋められる()のにかかる時間 について解く.
組立ての間,熱い枠と冷たい棒の間の熱流は温度 および にゆっくりと収束する.温度の変化により枠は収縮し,棒は膨張する.これにより最終的に2つの要素が繋がる.枠と棒はおおよそ でフィットすると推定できる.
用語集
参考文献
1. Krysl P. A Pragmatic Introduction to the Finite Element Method for Thermal and Stress Analysis. Pressure Cooker Press. (2005).