液面におけるガス吸収
はじめに
物理的ガス吸収と化学ガス吸収は別々の重要な過程であり,さまざまな産業で広く取り入れられている.ガス吸収は,気体から不必要な成分を分離したり,化学物質を製造したりするために使われる.
この例はガス吸収モデルを再現する[1].吸収過程は,以下の灰色で示されたガスと液体の界面で起こる.
ガスは完全に発達した層流にさらされる.ガスは流れる液体に対して順流か逆流かで流れる.ガス流の溶質は,その下にある液体流によって吸収されて除去され,溶質の物質輸送が気相から液相へと起こる.溶質と液体の接触時間は,放物線速度プロファイルが推定できるほどの長さである.定常状態条件が広がるものと想定される.後処理のセクションで,順流の場合と逆流の場合の吸収効率を比較する.
領域
相間物質移動をモデル化するために,ガス流と液体流の間の薄い相間領域を定義する.これにより連立の架空質量源により以下で指定される平衡条件(1)を強制し,2つの異なる位相の不連続の溶質濃度を扱うことができるようになる.
ここで相間領域の厚さ を,領域の高さのに設定する. が小さすぎると,界面付近で数値的不安定性が生じる可能性がある.
メッシュ生成
異なる物質領域と界面領域を構成する境界ElementMeshの生成から開始する.境界上では,順流と逆流の場合に対する境界条件を設定するために後で使えるマーカーを指定する.
気相と液相の間の物質移動を正確にモデル化するためには,相間領域が細かいメッシュでならなければならない.明確化のために,物質領域をAssociationとして加える.
物質移動モデル
気相と液相における種濃度を記述するために,別々の質量平衡方程式を使う:
ここで と はそれぞれ気相と液相に溶けている溶質の濃度である.2つの相の間の物質移動をモデル化するために,支配する質量平衡方程式(2)に対の物質源項 と を加えると,以下のようになる:
上記の方程式は3つの物質領域それぞれを含む連立方程式系になっている.
気相および液相における溶質の拡散係数はそれぞれ ,で与えられる. と はそれ自身の相と相間領域内でのみ活性である.
次に流速 を指定する.流速はそれぞれの部分領域でのみ活性である.ガス流速 は最初液体流速 と同じ方向である.
2つの相間の物質移動をモデル化するために,支配する質量平衡方程式(3)に対の質量源項 と を加えると,以下のようになる:
ここで と はにおいて設定されるため,平衡条件(4):は界面で強制することができる.
この方程式では は相間物質移動係数, は相間領域内でオン,オフを切り替えるスイッチである.
二抵抗理論に基づくと,界面は瞬時に平衡に達し,その状態がずっと維持されると考えられる.この状態は物質移動係数 を無限に大きく設定することによってモデル化することができる.ここでは,種拡散率(および )より数桁大きい を選ぶ.
2つの位相の界面では,濃度 と は不連続の可能性がある.比率 は平衡分布係数 として知られている.
係数 は圧力,温度,輸送される種の化学特性,両方の位相における媒体に依存する.値 は実験的な測定[2]で決定することができる.この例では,平衡係数は で与えられる.
質量保存の法則により,対の質量源項 および は同じ大きさであるが符号が異なる.
効率的なPDE係数の設定についてのこちらのヒントも参照のこと.
境界条件
PDEモデルを解く
後処理と可視化
ガス吸収の効率を測定するために,ガスの入口と出口の間で溶質の純減を計算する.このために,出口における平均濃度を境界積分で計算する.
逆流の場合,ガス流に含まれる溶質はだけ減少していて,順流の場合よりも効率がよい.
用語集
参考文献
1. Danish, M., Sharma, R.K. and Ali, S., Gas absorption with first order chemical reaction in a laminar falling film over a reacting solid wall, Applied Mathematical Modeling: 32 901–929 (2008).
2. Prausnitz, J. M., Lichtenthaler R. N. and de Azevedo, E. G. Molecular Thermodynamics of Fluid Phase Equilibria 3rd Ed., Prentice Hall PTR, New Jersey (1999).