数学表記と他の表記法

ノートブックにおける数学表記法
テキスト型インターフェースを使っている場合,入力式はキーボードから直接タイプする.ノートブック型インターフェースでは,キーボード以外の方法でも入力を行うことができる.
キーボード拡張のような役割を持つパレットが用意されており,そこにはマウスをクリックすれば指定の文字や記号が入力できるボタンが並んでいる.標準的なパレットを用いるには,パレットメニューを使う.
π と書かれたパレットボタンをクリックするとノートブックにpi が挿入される:

1.gif

パレットの最初のボタンをクリックするとベキ乗の原形を得ることができる.マウスで挿入点を移動してベキ乗を編集する:

2.gif

また,キーボードの特殊キーを使いパレットと同様な入力を行うこともできる.ここで言う特殊キーとは,それだけを押しても何も表示されないキーのことで,EscapeキーやControlキーがこれに相当する.特殊キーと普通のキーを組み合せることで,キーボードでも数式編集の命令や特殊文字の生成ができるようになる.
Esc p Esc
円周率
Esc inf Esc
無限大
Esc ee Esc
自然対数の底 Eと同等)
Esc ii Esc
を表す の記号(Iと同等)
Esc deg Esc
の記号(Degreeと同等)
Ctrl+^ または Ctrl+6
ベキ乗の原形を作り,上付き文字位置に移動
Ctrl + /
分数の原形を作り分母位置に移動
Ctrl+@またはCtrl+2
根号の原形を作り内側に移動
Ctrl + Space
ベキ乗,分母,根号から通常行位置へ戻る
標準英語キーボードで入力できる特殊文字と数式編集命令(注:Spaceはスペースバーを表す)
キーボードで普通にタイプして入力した式の例:
同じ計算を特殊キーを使って入力した例(パレットでも可):
上の例で使ったキー操作:
従来のプログラミング言語(C言語,Fortran,Java,Perl等)では,入力がキーボードに基づくものという前提に文法が構成されている.つまり,使えるのは数字とアルファベットと標準的な記号だけで,入力の仕方としてはラインモードだけが許される,という前提に基づいている.これに対して,Wolfram言語では,数学記号をはじめとする各種の特殊記号,さらには,上付き文字や分数等の組文字も使えるようになっている.
Wolfram言語を使い慣用的な数学表記で数式を記述することも可能である.ただし,この表記法には曖昧な部分があるため慣用的な表現をそっくりそのまま使える,というようにはなっていない.つまり,読みやすい数学表記全体は取り入れてあるが,曖昧な表記は言語から排除してある.Wolfram言語の正確さと一貫性を保つためである.
それでも,表示上は完全な慣用的数学表記で数式の出力ができるようになっている(「入出力の表記法」を参照).また,数学表記で書かれたテキストをWolfram言語に読み込ませ,Wolfram言語の書式に変換することも限られた範囲で可能である.
特殊文字:数学表記およびその他の表記
Wolfram言語には数学表記やその他の表記で使うための非常に多くの特殊文字が組み込まれている.「名前付き文字のリスト」に特殊文字の一覧があるので参考にするとよい.
特殊文字のひとつひとつにはのような固有の呼名が付けられている.また,よく使われる特殊文字には早く呼び出せるように短縮名(エイリアス)が割り当てられている.エイリアスにはEscinfEscのような呼名の短縮形が使われる.「式の入出力に関するオプション」にあるノートブックオプションのInputAliasesを使って,独自のエイリアスを作ることもできる.
TeXの標準言語で提供される特殊文字なら,TeXに基づいたエイリアスを使い呼び出せるようになっている.例えば,を入力するにはエイリアスEsc\inftyEsc.を使えばよい.Wolfram言語では,さらに,SGMLとHTML規格で使われる名前に基づいたエイリアス,例えば,Esc∞Escもサポートされる.
さらに,多くのコンピュータに搭載されている標準オペレーティングシステムでは特殊文字を入力するため特殊な組合せキーが提供される.例えば,Macintoshコンピュータでは,ほとんどのフォントでOption+5の組合せキーを押すとが入力できる.ノートブック用フロントエンドを使っている場合,定義さえしてあればこのような組合せキーがいつでも使える.また,テキスト型インターフェースを使っている場合でも,$CharacterEncodingに適切な値をセットしておけば組合せキーが使えるようになる.
完全名を使う.(例:
エイリアスを使う.(例 :EscinfEsc
TeXのエイリアスを使う.(例 :Esc\inftyEsc
SGMLまたはHTMLのエイリアスを使う.(例 :Esc∞Esc
パレット上のボタンをクリックする
オペレーティングシステムの提供する組合せキーを使う
特殊文字の入力法
ノートブックでは,キーボードから入力する普通の文字と同じように特殊文字が使える.特殊文字は普通の文章にはもちろんのこと,Wolframシステムに入力する数式やコマンドにも使ってよい.
Wolframシステムの式で使うとき,特殊文字によっては特別な意味を持つものがある.例えば,Piを意味し,は関係演算子>=として機能する.また,は関数Unionの機能を持つ.
特殊文字 を式で使うと特別な意味を持つ:
[Union]Union関数として特別な意味を持つ:
[SquareUnion]は数式処理上の特別な意味を持たない:
普通の文字でもEiのように数式処理上の特別な意味を持つものもあるが,そのほとんどは意味を持たない.特殊文字の場合も同じである.
つまり,例えば, は特別な意味を持つが, は持たない.
このことは についてユーザ定義の関数を設けることを許す.
はWolframシステムにとって特別な意味を持たない:
に数式処理上の意味付けをする:
今度は他の組込み関数のように が評価される:
のような文字は単なる文字としてキーボードにあるabの普通のアルファベット文字のように扱われる.
一方,のような文字は演算子として扱われる.Wolframシステムではこれらの特殊文字に特別な意味付けをしていないが,それでも,Wolframシステムの文法に準じた使い方をしなければならない.
は中置演算子である:
に関数的な意味付けをする:
が評価されるようになる:
入力式がWolframシステムでどう解釈されるか,その詳細は標準形(StandardForm )を使っているか慣用形(TraditionalForm)を使っているかでも違う.また,解釈ボックス(InterpretationBox )等の構成体に与えた付加情報によっても違ってくる.
特殊文字にすでに組み込まれている規則をMakeExpressionを使い無効とする新規則を設けてやらない限り,Wolframシステムは特殊文字に同じ基本的な文法上の性質を割り当てる.
特殊文字がWolframシステムの入力としてどう解釈されるかは,それに割り当てられた文法的特性による.また,その特性は,特殊文字で構築した式の構造をも決める.さらに,この特性は特殊文字の表示書式にも影響を与える.例えば,文字が演算子として作用するなら,文字の両側には補助的なスペースが挿入される.普通の文字ならスペースは挿入されない.
文字
a,E,
文字的な記号
演算子
特殊文字の種類
特殊文字を使うときは,目的にあったものかどうかをよく確かめてから使うとよい.表示上似たような文字がいくつかあるが,それぞれ違ったものである.
まぎらわしい特殊文字に総和のための演算子すなわちがある.この文字は表示上,文字のすなわちΣに非常によく似ている.
それでも,のギリシャアルファベットに比べて演算子はどちらかというと簡素に描かれ形式的な形を持つ.また,は総和の演算子であれば,総和式の大きさにより文字の大きさが調整される.ギリシャ文字としてのは現行フォントの大きさしか取らない.
表示上似通った文字
ΑAの場合,両方とも文字として扱われるが,Wolframシステムでは異なった文字として扱う.また,フォントを変えたりすれば,極めて違う形で表示される.
出力結果は意味の違う文字を4つ含む:
伝統的な数学の記述では演算子に普通のアルファベットが使われる.例えば,積分で使う微分記号dxにあるdがそれに対応する.
正確で一様な文法を維持するために,少なくとも標準形(StandardForm)では普通のdと微分演算子であるは分けて使われる.
特殊文字であるは微分を行う演算子である.この特殊文字はエイリアスEscddEscを使っても入力できる.
微分演算子である特殊文字を使い積分を表す.普通のアルファベットdではない:
Wolframシステムへの入力成分としてアルファベットやそれに類似した文字があるとき,それらは通常,変数や関数等の名前を表すものとして扱われる.また,演算子があると,それに対応した関数が構築されなければならない.そのとき取られる手順として,演算子として機能する特殊文字の完全名が抽出され,構築する関数の名前に当てられる.
演算子であるすなわちCirclePlusに対応した形で関数が構築される.関数名には[CirclePlus]が当てられる:
論理積の関数Andが構築される.Wolframシステムにはその評価用規則が組み込まれている:
上述の演算子名と関数名の間に見られる関係に従い,Wolframシステムの組込み関数,例えばを意味する特殊文字は組込み関数の名前を持つ.いくつかの例を見てみよう.特殊文字は名前が÷で,組込み関数Divideに関連付けられている.また,特殊文字は,の名前を持ち,組込み関数Impliesに関連付けられている.
演算子となるものを除き,特殊文字には可能な限り慣用的な名前が付いている.Wolfram言語内の別の記述と混同しないように.特殊文字の多くはそれらの表示の形を説明するような名前を持つ.にはの名前が付けられている.\[DirectSum]のような機能的な名前ではない.また,には名前が付いている.\[ApproximatelyEqual]ではない.
表示的に類似した演算子として働く特殊文字
文字の中には同じように表示されるが全く違った演算子を表すものもある.例として×がある.×は掛け算の関数Timesを表すためにあるが,はベクトルの外積を計算する関数Crossに対応している.また,Wolframシステムの表示技法の正確性を反映して,の表示形\[Times]の表示形に比べて,やや小さく描かれる.
×は乗算を表す演算子である:
演算子はベクトルの外積を表す:
2つの演算子はよく似ている.気を付けてみると,×よりやや大きい:
を比べてみよう.は後者に比べやや大きめに描かれ組込み関数Andに関係付けられる.一方,は表示形を表すような名前を持つが,特殊な意味は持たない.
[Wedge][And]を混ぜて使ってもよい.それぞれ違った優先度を持っているから混同されることはない:
数学表記の演算子として普通使われる特殊文字の中にはキーボードの普通の文字に表示上よく似たものがある.例として,キーボードにあるハット記号^に似ているすなわち[Wedge]がある.
Wolframシステムではハット記号^はベキ乗として解釈される.一方,は汎用のWedge関数として扱われる.キーボードの文字に類似した特殊文字がある場合,規約で特殊文字のエイリアスにはキーボードの文字が充てられる.例えば,のエイリアスはEsc^Escとされる.
ハット記号^はベキ乗として解釈されるが,Esc^Escは汎用のくさび形演算子である:
キーボードで入力できる演算子を表すために特殊文字を使うときは,上記の規約に関連した規約が使われる.つまり,キーボードの文字が特殊文字のエイリアスに充てられる.例として,またはを表すEsc->Escがある.また,Esc&&Escまたはを表す.
Esc->Escのエイリアスである.また,Esc&&Escのエイリアスである:
類似する文字の中で最も異なった働きを持つものに垂直バー記号がある.
表示形
名前
エイリアス
意味
x|y|
Alternatives[x,y]
xyEsc|EscVerticalSeparator[x,y]
xyEsc|EscVerticalBar[x,y]
xEscl|EscBracketingBar[x]
Escr|Esc
垂直バー記号のいくつか
のエイリアスはEsc|Escである.また,より頻繁に使われるのエイリアスはEsc|Escである.Wolfram言語では,似通った文字には似通ったエイリアスがよく与えられている.また,より一般的でない文字に対しては,エイリアスの先頭にスペースを加える,という有効な規約がある.
EscnnnEsc
一般的な文字に使う組込み型のエイリアス
EscnnnEsc
類似しているが一般的ではない文字に使う組込み型のエイリアス
Esc.nnnEsc
Wolframシステムセッションで定義される大域的なエイリアス
Esc,nnnEsc
特定のノートブックで定義されるエイリアス
特殊文字のエイリアスと記述上の規約
ノートブック用フロントエンドを使っている場合,特殊文字に対してユーザ定義のエイリアスを与えることができる.必要ならば,組込み済みのエイリアスを上書きする形で定義してもよい.規約では,ユーザ定義のエイリアスはコンマで始まることになっている.
特殊文字に対してどんなエイリアスを使おうが,その文字がファイル等に保存されるときは常に完全名が使われることに注意が必要である.
シンボルの名前と数学のオブジェクト
Wolfram言語ではアルファベットや文字的な記号から構成される文字列は,デフォルトでシンボルの名前として解釈される.
これらの文字や記号はすべてシンボルの名前として扱われる:
シンボル
名前
エイリアス
意味
π
Esc p Esc , Esc pi Esc
Piに等しい
Esc inf Esc
Infinityに等しい
Esc ee Esc
Eに等しい
Esc ii Esc
Iに等しい
Esc jj Esc
Iに等しい
数式処理上の意味を持ち,英語アルファベット大文字で始まらない名前を持つシンボル
数式処理上の組込み済みの意味を持つすべてのシンボルは英語アルファベット大文字で始まる名前を持つ.例外に EI に相当する がある.
StandardFormの入出力双方で, のような形式を用いることができる:
OutputFormでは E と出力される:
手書きのノートや出版物では,数学的なオブジェクトを表すのに短い名前を使うのが普通であり,大概は一文字の名前が使われる.一方,Wolfram言語では,かえって長い具体的な名前を使った方が都合がよい.
筆記的なメディアなら,特定な一文字の名前である場所で1つのものを表し,他の場所ではそれを別のものとして使っても説明文を付けるので問題ない.しかし,Wolfram言語では,別の文脈の箇所で使わない限り,特定な名前を持った大域的シンボルは常に同じものとして扱われる.
混乱を避けるため,名前は長くなっても意味のあるものを使った方がよい.その方が名前がより固有なものになる.
しかしそれでも,何も値が割り当てられない変数や局所変数には一文字的な短い名前を使った方が便宜上よいかもしれない.
大域関数LagrangianLには長い説明調の名前を与えた方が分かりやすくてよい.局所変数は短い名前でもよいだろう:
表示形
入力方法
対応する関数
xn
x Ctrl+_ n Ctrl+Space
Subscript[x,n]
x+
x Ctrl+_ + Ctrl+Space
SubPlus[x]
x-
x Ctrl+_ - Ctrl+Space
SubMinus[x]
x*
x Ctrl+_ * Ctrl+Space
SubStar[x]
x+
x Ctrl+^ + Ctrl+Space
SuperPlus[x]
x-
x Ctrl+^ - Ctrl+Space
SuperMinus[x]
x*
x Ctrl+^ * Ctrl+Space
SuperStar[x]
x
x Ctrl+^ EscdgEsc Ctrl+Space
SuperDagger[x]
x Ctrl+& _ Ctrl+Space
OverBar[x]
x Ctrl+& EscvecEsc Ctrl+Space
OverVector[x]
x Ctrl+& ~ Ctrl+Space
OverTilde[x]
x Ctrl+& ^ Ctrl+Space
OverHat[x]
x Ctrl+& . Ctrl+Space
OverDot[x]
x Ctrl+$ _ Ctrl+Space
UnderBar[x]
xStyle[x,Bold]x
注釈的な名前を持つオブジェクトの作成
ノートブック用フロントエンドを使っている場合,メニュー項目を使いテキストの書式スタイルが変更できる.
オプション
通常のデフォルト値
SingleLetterItalicsFalse
一文字のシンボル名を斜体化するかしないかの指定
MultiLetterItalicsFalse
複数文字のシンボル名を斜体化するかしないかの指定
SingleLetterStyleNone
一文字のシンボル名に使用するスタイル名あるいは指示子
MultiLetterStyleNone
複数文字のシンボル名に使用するスタイル名あるいは指示子
ノートブックのセル関連オプション
伝統的な数学表記で慣用的に使われる,通常の英語一文字からなる名前は普通斜体化される.他の名前はそのようなことはない.Wolfram言語において慣用形(TraditionalForm)を使うと,これと同じことが規約として守られる.特別にオプションSingleLetterItalicsをセルに設定することで一文字変数を斜体化するよう指定できる.さらにオプションSingleLetterStyleおよびMultiLetterStyleの値を指定することにより,英語一文字あるいは複数文字を使った名前のスタイルを指定することができる.
文字と文字的な記号

ギリシャ文字

Wolfram言語で使用可能なギリシャ文字の一覧
ギリシャ文字は変数や関数等の名前に使ってもよい.表示が標準形(StandardForm)なら,ギリシャ文字の中で特別な意味を持つのは だけであり,Piを表すのに使う.
は単独なら組込み済みの意味を持つが, のように他の文字や記号と組み合せた場合はその限りでない.
ギリシャ文字のはそれぞれ総和と乗積の演算子によく似ている.先に説明したように,これらの演算子を入力するときは[Sum][Product]がそれぞれ使われる.
これと同様に, は演算子を表す[Element]とは異なるし, または[Micro]とは違う.
ギリシャ文字の中には[CapitalAlpha](大文字アルファ)のように英語のアルファベットに酷似したものがある.表示では同じように映っても式の中では別物として扱われる.慣用形(TraditionalForm)を使っているとき,組込み関数Betaの表記には[CapitalBeta]が使われる.
Wolframシステムの標準フォントを使っているなら,慣用表記に習ってギリシャ語小文字の表示には若干の斜体化が施される.大文字には斜体化は行われない.しかし,ギリシャ語のシステムでは,Wolframシステムは標準的なギリシャ語フォントが使えるように,ギリシャ文字を斜体にしないで描画する.
英語アルファベットに似ていないギリシャ文字は,そのほとんどが科学と数学で頻繁に使われている.大文字カイ は,カスケード型ハイパロン素粒子や大きなカノニカル分配関数,そして言語コンプレックスの記述の他はあまり使われない.大文字ウプシロンもあまり使われない.まれに 素粒子,そして季節の春分を表すのに使われる.
ギリシャ文字だけがよく特別な意味を持つものとされる.普通の英字はそのようなことはない.数学ではよく式に修飾的な文字と普通の形の文字を混ぜて使うことがある.修飾形のパイである は天文学を除いてまれにしか使われない.
終止シグマである はギリシャ語の文章において単語末尾に現れるシグマである.技術的な記述では普通使われない.
ディガンマ ,コッパ ,スティグマ ,サンピ は古代ギリシャ文字であり,普通のギリシャ語文字セットを拡張するのに便利である.これらの文字はギリシャ文字を英語アルファベットに対応させるのに必要なことがある.ディガンマは英語のwに対応し,コッパはqに対応している.ディガンマはディガンマ関数PolyGamma[x]の表記で使われることもある.

英語の変形アルファベット

一般的に使われる英語の変形文字
ノートブック用フロントエンドのメニューコマンドを使うことで,テキストのフォント等の書式スタイルを変更できる.ただし,テキスト要素が式の成分としてあるとき,式をWolfram言語カーネルに送ったら変更した書式設定情報は失われてしまう.
スクリプト体,ゴシック体,そして二重文字が普通の形の文字と根本的に別物として扱われる.カーネルでは,太文字または大きさが違ってもCCとして解釈されるが,二重書体のは別の文字として扱われる.
カーネルでは字面や大きさが違ってもCはCとして扱われる.ゴシック体と二重文字は別物として扱われる:
標準的な数学記述では,スクリプト体の大文字とゴシック体は交換が可能である.ときに縁取り文字やオープンフェース書体とも呼ばれる二重文字が慣用で集合を表すため使われる.例えば,は複素数の集合を,または整数の集合を表すのに使われる.
上付き点の除かれたiとjの表記は,普通のiとjと同じ意味を持つものとされる.普通のiとjに真上付き文字が付けられたとき,この上付き点の除かれた文字が使われる.
[WeierstrassP]はワイエルシュトラス(Weierstrass)のP関数であるWeierstrassPを表すためだけに使われる記号である.
完全名
エイリアス
EscscaEsc EscsczEsc
スクリプト体小文字
EscscAEsc EscscZEsc
スクリプト体大文字
EscgoaEsc EscgozEsc
ゴシック体小文字
EscgoAEsc EscgoZEsc
ゴシック体大文字
EscdsaEsc EscdszEsc
二重書体の小文字
 
EscdsAEsc EscdsZEsc
二重書体の大文字
a  z
Esc$aEsc Esc$zEsc
小文字の形式文字
A  Z
Esc$AEsc Esc$ZEsc
大文字の形式文字
英語の変形アルファベット一覧

形式文字

ある関数の出力では,形式文字(形式記号)で表される記号が現れる.それは英語の文字の下に灰色の点が付いたもので示される.
DifferentialRootは自動的に関数の引数の名前を選ぶ:
形式文字はProtectedなので,誤って値が割り当てられるということはない.
形式文字を変更しようとしても失敗する:
つまり,形式文字に依存する式は,誤って編集されたりすることがない:
形式文字の特定の値は,置換規則を使って代替することができる.
定義方程式が余弦に対して正しいことを検証する:
形式文字はBlockの内部で一時的に変更することができる.それはBlockAttributesを含むシンボルに関連付けられたすべての定義をクリアするからである.Tableも実質的にBlockのように動作するため,一時的な変更が可能である.
一時的な値をyに割り当てる:
ほとんどの場合,形式文字を変更する必要はない.形式文字はDifferentialRootの中で関数の形式パラメータを表す名前として使われるので,関数は引数の実際の値に対して評価されるだけである.
関数を評価するとxxに,yyに置換される:
形式文字に対して,カスタムのタイプセット規則を定義することができる.
気形式文字を強調するために,色付けを使う:
MakeBoxesにはフォーマット規則が付けられている.もとのフォーマットを復元する:

ヘブライ文字

ヘブライ文字一覧
数学ではヘブライ文字は超限数(transfinite)の集合理論で使われる.例えば,整数の総数を表すのに が使われる.

単位と文字的な数学記号

単位と文字的な数学記号
°は度数の変換係数Degreeとして扱われる.30°30Degreeに等しい.
は,普通の文字である (μ), (Å), (Ø)とは異なる.
Infinityとして,Eとして,また,Iとして解釈される.小文字形の記述 はそれぞれ通常の大文字記述EIの代りに使われる.
StandardFormとしては にはデフォルト値を割り振ってないので,Piとして自動的に扱われないpiを表すときに を使うことができる.なおTraditionalFormEulerGammaとして扱われる.
文字的な演算子
は演算子で,は普通の記号である:

図形記号

修飾記号
修飾記号は「ディングバット」として文章の特定箇所を強調するときによく使われる.Wolfram言語では文字的な働きをするものとして,シンボル名の一部として使うことも可能である.
の表示形を加えると,のような図形記号となり,文字としてよりは演算子としてWolfram言語は扱う.
アイコン
アイコン文字は他の文字と同じように扱うことができる:
図形記号の記述
Wolfram言語では 等の図形記号は文字のように扱われるので,のような記述は単一の名前として扱われる.

テキスト的な要素

句点用記号と注釈用記号
文章中で使われるその他の記号
系列と配列を構築するときに使う記号
式を囲むように上側と下側の中カッコが引き伸ばされる:

拡張ラテン文字

Wolfram言語ではラテンスクリプトに基づく西欧言語系で使われるすべての文字がサポートされる.
英語の変形文字
上の表に掲載した文字の多くは読分け記号を普通の英語アルファベットに付加することで形成される.例外として,ドイツ語のß と古代英語で主に使われるþ ,そしてð がある.
必要に応じて,ユーザ自身で特別に読分け記号を付加すれば新たな文字が形成できる.
char Ctrl+& mark Ctrl+Space
文字の真上に記号を付加する
char Ctrl+$ mark Ctrl+Space
文字の真下に記号を付加する
文字の真上真下位置への読分け記号の付加
表示形
エイリアス
完全名
'
(キーボード文字)
'
揚音アクセント
Esc
揚音アクセント
`
(キーボード文字)
`
抑音アクセント
Esc `Esc
抑音アクセント
. .
(キーボード文字)
ウムラウトまたは分音
^
(キーボード文字)
^
アクセントまたはハット
Esc esciEsc
リング
.
(キーボード文字)
.
ドット
~
(キーボード文字)
~
ティルデ
_
(キーボード文字)
_
長音
ˇ
EschckEsc
ˇ
ハチェック
˘
Esc bvEsc
˘
短音
Esc dbvEsc
タイアクセント
Esc
ロングウムラウト
¸
Esc cdEsc
¸
セディラ
文字の読分け記号
演算子

基本的な数学の演算子

四則計算と基本的な代数計算の演算子のいくつか
[Cross]に使う[Times]とは区別され,前者は後者より若干小さめに表示される.
x×yTimes[x,y]
乗算
x÷yDivide[x,y]
除算
xSqrt[x]
平方根
xyCross[x,y]
ベクトルの合成積
±xPlusMinus[x]
(特別な意味は組み込まれていない)
x±yPlusMinus[x,y]
(特別な意味は組み込まれていない)
xMinusPlus[x]
(特別な意味は組み込まれていない)
xyMinusPlus[x,y]
(特別な意味は組み込まれていない)
四則計算と基本的な代数計算の演算子の説明

微積分学と代数の演算子

微積分学の演算子
複素数と行列の演算子

論理結合子とその他の結合子

論理結合子として使われる演算子
演算子は組込み関数であるAndOrNotにそれぞれ対応しており,また,キーボードで入力可能な演算子&&||!に等しい.演算子は組込み関数のXorNandNorにそれぞれ対応する.ここで,は前置演算子であることに注意する.
xyxy はともに組込み関数Implies[x,y]と解釈される.xy は組込み関数Element[x,y]と解釈される.
組込み関数であるAndImpliesが使われ,この式の解釈がなされる:
数学で見られる一般的な規約のほとんどはWolfram言語でも有効である.ただし,Wolfram言語では,数量化記号であるに現れる変数は下付き文字として入力しなければならない.これらの記号の後に普通の形で入力すると,乗算の演算子と競合するかもしれない.
は基本的に のような前置的な演算子である:

アクションを表すための演算子

通常アクションを表すのに使われる演算子(注:[Square]以外はすべて中置演算子である)
Wolfram言語の通常の規約に従い,上の表に載っているすべての演算子は,それを表すための完全名と同じ名前を持った関数を与えるものと解釈される.
これらの演算子はそれらの完全名の関数を表すものとする:
上の表の演算子はを除きすべて中置的に使われる.つまり,2つの演算数の間に置かれる.

ブラケット化演算子

ブラケット化演算子として使われる文字
xFloor[x]
xCeiling[x]
mi,j,Part[m,i,j,]
x,y,AngleBracket[x,y,]
x,y,BracketingBar[x,y,]
x,y,DoubleBracketingBar[x,y,]
ブラケット化演算子の説明

関係を表すための演算子

類似性や等価性を表す演算子
特殊文字である(または,[Equal])は==のもう1つの入力法である. は入力と出力の両方で使われる:
通常,値の大きさによって順序付けを行うために使われる演算子
集合論における関係を表すための演算子
別の規定による順序付けを行うために使われる演算子
垂直バー記号に基づいた関係演算子

矢印記号とベクトル記号に基づいた演算子

数学を始めいろいろな分野で変換操作や変化状況を表すために,矢印記号に基づいた演算子がよく使われる.
->と同じ働きをする:
数式処理上の組込みの意味を持つ矢印記号の演算子
普通の矢印記号
ベクトル記号と関連した矢印記号
Wolfram言語では矢印記号とベクトル記号はすべて中置的に使う:
T形記号
構造化要素とキーボード文字
完全名
エイリアス
Esc , Esc
Esc @ Esc
Esc is Esc
Esc + Esc
完全名
エイリアス
Esc am Esc
Esc nb Esc
Esc null Esc
隠し文字
12の間には見えないが隠しコンマが置かれている:
この式にはxyの間に隠しスペースが入っているので,乗算と解釈される:
は表示に現れないが,上付き文字だけを入力したいときに使うと便利である:
は表示に現れないが,列の要素を揃えるための指示を与える:
演算子 は,帯分数の隠れされたプラス記号として使われる:
完全名
エイリアス
Esc Esc
Esc Esc
Esc Esc
Esc Esc
Esc is Esc
完全名
エイリアス
Esc - Esc
Esc - Esc
Esc - Esc
Esc - Esc
  
Esc nbs Esc


Esc nl Esc
間隔調整文字と改行文字
表示形
完全名
エイリアス
Esc spl Esc
表示形
完全名
エイリアス
Esc pl Esc
ボタン編集用の文字
パレットのボタンを編集するときによく,プレースホルダをあしらったテンプレートを設けることがある.プレースホルダは式の挿入点を表すのに加えられる.また,ボタン内容のペースト要求があると文書で選択した式が挿入されるが,その位置はで指定する.さらに,選択した式の挿入に続けて他の式も挿入するときはを使い挿入位置を指定しておく.二次式を挿入する際はTabキーを使うと,次の挿入点にジャンプできて便利である.
表示形
完全名
エイリアス
Esc space Esc
Esc ret Esc
Esc ret Esc
Esc ent Esc
Esc esc Esc
EscEsc
Esc esc Esc
表示形
完全名
エイリアス
Esc ctrl Esc
Esc cmd Esc
Esc [ Esc
Esc ] Esc
Esc cl Esc
キーボードのキーを表すための記号
Wolframシステムへ式をどう入力するか説明するときは,どのキーを押したらよいかを説明しなければならないだろう.の記号を使えばそのようなキーを表す記号を簡単に入力することができる.はスペース文字として実際に処理されることに注意のこと.
α2の入力方法:
表示形
完全名
表示形
完全名
Wolframシステム出力に表示される文字
Wolfram言語 は,その数値を次の行に続けて表示するときの文字を使う:
表示形
完全名
        
!!
"\[RawDoubleQuote]
##
$$
%%
&&
''
((
))
**
++
,,
--
..
表示形
完全名
//
::
;;
<<
==
>>
??
@@
[[
\\
]]
^^
__
``
{{
||
}}
~~
未処理のキーボード文字
普通のキーボード文字をWolframシステム独自の書体で描画できるように,フォントがWolframシステムと一緒に配布されている.その理由はオペレーティングシステムの標準システムフォントでは必要な書体が得られないからである.例えば,標準フォントでは,^~ の記号はよく小さめに描かれ,行の中心位置より上側に置かれる.Wolfram言語のフォントでは,分かりやすくするため,この記号を大きめにして中心位置に描く.