正方行列 m のジョルダン(Jordan)分解を行う.結果として,リスト{s,j}を与える.s は相似行列を表し,j は m のジョルダン標準形を表す.
JordanDecomposition
正方行列 m のジョルダン(Jordan)分解を行う.結果として,リスト{s,j}を与える.s は相似行列を表し,j は m のジョルダン標準形を表す.
詳細
- もとの行列 m は s.j.Inverse[s]に等しい. »
- 行列 m は数値でも記号でも指定可能である.
- j 行列はジョルダン標準形と呼ばれる.
- 行列のジョルダン標準形は,固有値が主対角上に重複して出現するブロック対角行列である.最初の上対角要素には複数の固有値から構成される非自明なジョルダンブロックが存在する1が含まれることがある.その他の要素はすべてゼロである.
- 各固有値はブロックを決定し,重複度を持つ固有値は常に同じブロック内に出現する.これらの固有値はサブブロックに分割されることがある.新しいサブブロックは,固有値の上,つまり上対角線の位置が1ではないことで示される.
- ブロックの長さは,固有値の代数的重複度である.サブブロックの数は幾何学的重複度であり,その固有値の線形独立な固有ベクトルがスパンする部分空間の次元と同じである.この部分空間は,その固有値から固有空間と呼ばれる.
- 各サブブロックは,固有空間から独立した固有ベクトル v に関連付けられ,これらを合わせると,その空間をスパンする.サブブロックに関連付けられた後続のベクトルは,広義固有ベクトルと呼ばれる.j 番目のそのようなベクトル vjは行列 m と固有値 λ に対してサブブロックの真の固有ベクトルと式(m-λ imat)j.vj=v で関連付けられる.ここで,imat は m と同じサイズの単位行列であり,指数は行列のベキ乗を表す.
- ジョルダン標準形はブロックの順序とブロック内のサブブロックの順序まで一意である.順序の変更は相似行列の変化に対応する.
- すべての固有値の重複度が1の場合,ジョルダ標準形はそれらの固有値からなる対角行列と順序付けまで同じである.これは,上対角に1が存在しない場合に,一部の固有値が非自明な重複度を持つ場合でも,より一般的にあてはまる.このような場合には,相似変換は対応する固有ベクトルの行列の転置に過ぎない.
- 同じ次元の正方行列 m1と m2は,同じ次元の可逆行列 s が存在し,m2=s.m1.Inverse[s]が成立する場合,相似行列と呼ばれる.相似行列は同じジョルダン標準形を持つ.
例題
すべて開く すべて閉じるスコープ (10)
基本的な用法 (6)
特殊行列 (4)
IdentityMatrixはジョルダン標準形である:
HilbertMatrixのジョルダン分解:
アプリケーション (13)
一般化された固有ベクトルと対角化可能性 (4)
行列
について,ジョルダン分解の
行列の列を真の固有ベクトルと一般化された固有ベクトルの観点から解釈する:
対応する
(列1, 3, 4)の対角より上に
が存在しない
の列は,
の真の固有ベクトルである:
以下の行列には,1つの固有ベクトルしかないが
の基底を形成する一般化された固有ベクトルの完全鎖はあることを示す:
Eigensystemは,84がただ一つの独立固有ベクトルを含む重複度4の固有値であることを示す:
JordanDecompositionの
行列の第1列は固有ベクトルが見付かった列である:
は空のNullSpaceを持つので,その列は
の基底を形成する:
正方行列は固有ベクトルの完全集合を持ち,したがって
行列が対角行列であるときかつそのときに限って対角化可能である:
DiagonalizableMatrixQを使って確かめる:
はJordanDecompositionを使って対角化可能な行列とベキ零行列の和として書くことができる:
相似行列 (5)
行列 m1とランダム可逆行列 s は相似行列 m2を与える:
固有値はすべて異なるため,固有ベクトルは順序付けと定数による乗算まで相似変換の転置と一致する:
対角化可能な行列について,ジョルダン分解は対角化を
として直接与える.これを使って行列
を対角化する:
は標準行列が行列
で与えられる線形変換であるとする.基底
が対角である
の表現における特性で
の基底
を求める:
は固有ベクトルつまり
の列からなるとする.
が
-座標から標準座標に変換されるとその逆行列は逆の方向に変換される:
これは成分が固有値である単純な対角行列である点に注意のこと:
実数値対称行列
は
として直交対角化可能である.ただし,
は実数値の対角で
は直交である.以下の行列が対称行列であることを確認してこれを対角化する:
ならその行列は正規行列と呼ばれる.正規行列はユニタリ変換で対角化可能な最も一般的な行列である.実数値対称行列
は方程式の両辺が単に
なのですべて正規行列である:
NormalMatrixQを使って確かめる:
行列関数と動的な系 (4)
である.
は上三角行列でほぼ対角行列なので,対角成分は
乗され,成分
は
になる:
MatrixPowerを使った直接計算で確認する:
指数行列にベキ級数を適用すると,対角成分が明らかに
になり,非対角成分は単に指数を再構成した指数和になる.したがって,これもまた
になる:
MatrixExpによる直接計算を使って確かめる:
以下の行列
の単一鎖と
,
,
の各関数からなるジョルダン行列についての式
を確認する:
MatrixFunctionを使って計算を確かめる:
MatrixFunctionで結果を確認する:
にはパラメータがあるので,Derivativeの代りにDを使って
を代入する:
再度,Functionを使って
が入力された際の結果をMatrixFunctionで確認する:
常微分方程式系
,
,
を解く.まず,右辺についての係数行列
を構築する:
DSolveValueを使って解を確認する:
特性と関係 (10)
JordanDecomposition[m]は m の行列因子分解を s.j.Inverse[s]として与える:
m は s.j.Inverse[s]に等しい:
行列は,そのジョルダン分解の j 行列が対角行列のときかつそのときに限って対角化可能である:
EigenvalueDecomposition[m] は,m のジョルダン行列が対角行列である場合かつその場合に限って存在する:
分解が存在するとき,それはJordanDecompositionと一致する:
JordanDecompositionは,対角化可能な行列については関数の適用を固有値への適用に限定する:
対角化を使って対角成分のみをベキ乗することで対角化行列指数関数を計算する:
MatrixExpを使って指数行列を計算する:
ジョルダン分解は,対角化不可能な行列については関数の適用を一般化された各固有ベクトル鎖への適用に限定する:
関数適用は,j が対角より上で1である列については対角の上にしか拡張されない:
数値正規行列
についてSchurDecomposition[n,RealBlockDiagonalFormFalse]である:
関連項目
Eigensystem SingularValueDecomposition QRDecomposition SchurDecomposition MatrixExp MatrixFunction Minors
Function Repository: WeyrDecomposition
テクニカルノート
-
▪
- 行列の高度な操作
関連するガイド
-
▪
- 行列分解
履歴
1996 で導入 (3.0) | 2010 で更新 (8.0)
テキスト
Wolfram Research (1996), JordanDecomposition, Wolfram言語関数, https://reference.wolfram.com/language/ref/JordanDecomposition.html (2010年に更新).
CMS
Wolfram Language. 1996. "JordanDecomposition." Wolfram Language & System Documentation Center. Wolfram Research. Last Modified 2010. https://reference.wolfram.com/language/ref/JordanDecomposition.html.
APA
Wolfram Language. (1996). JordanDecomposition. Wolfram Language & System Documentation Center. Retrieved from https://reference.wolfram.com/language/ref/JordanDecomposition.html
BibTeX
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